【インタビュー】BabyKingdom、『千夜一夜物語』がテーマの新アトラクション解禁「バンドマン版『世界ふしぎ発見!』を毎回やってる」

“MUSIC THEME PARK” をコンセプトにエンターテインメントを追求するBabyKingdomが、10月8日に新アトラクション「ALPHA来夜/ヒラケゴマ」を発表した。

本作のテーマは、『千夜一夜物語』。エスニックなリズム、演劇的な曲構成で、ドラマチックな一曲に仕上がっている。キャッチーなカップリング曲とあわせても、これまであるようでなかった新たなアトラクションに、またも度肝を抜かれることとなった。

   ◆   ◆   ◆

──BabyKingdomは海賊、忍者、西部劇、古代エジプト、恐竜、西遊記、戦国武将、メキシコ・死者の日、陰陽師といった多彩なコンセプトを次々と提示しながらアトラクション(作品)を発表してきましたが、ついに今回の両A面シングル「ALPHA来夜/ヒラケゴマ」ではMUSIC THEME PARK内にアラビアンコーストエリアが新設されましたね。ということで、まずは今回の“配役”から教えてください。

咲吾(Vo):僕は『千夜一夜物語』の語り手であると同時に、魔人要素もちょっと持っていたりする感じです。

──本来『千夜一夜物語』の語り手はシェフリヤール王の妃シェヘラザードですが、そのポジションを咲吾さんが担われているわけですね。では、志記さんは?

志記(G):砂漠を旅をする商人です。

──いわゆるキャラバンということでしょうか。そして、もにょさんは人物というよりも、もしやこの衣装はランプそのもの?!

もにょ(B):ランプの魔神です。ただ、ランプから飛び出してくるところを間違えた魔神で、普通だったらランプの先っぽから出てくるはずなんですけど、衣装のズボンがランプになっているので、蓋の方から間違えて飛び出してきてしまったかたちになります(笑)。

──一方、ヘソ出し衣装がセクシーな虎丸さんは…

虎丸(Dr): 踊り子なんですけど、僕自身はダンスは踊れません。

──とはいえ、以前ライブでは「監獄☆BEAT」でパラパラを踊っていらしたような。しかも、ドラマーであるということはリズム感は良いはずですのに。

虎丸:まぁ、あれが限界ですねぇ。多分ダンスとドラムって使う筋肉も全く違うし、いろんな動きを次々にやらなきゃいけないから脳みそが追っつかないんですよ。今回の「ALPHA来夜」では、MVでも僕は踊り子なのにちょっと飛び跳ねてるくらいです(笑)。

──ダンスといえば、咲吾さんは「ALPHA来夜」のMVで華麗な舞いをみせてくださっていますよね。

咲吾: 一応アラビアン的ダンスみたいなものは調べましたけど、やっぱりそんなにすぐ覚えられるものではないですから。特徴的な動きだけをMVで取り入れました。

──なお、「ALPHA来夜」は曲タイトルの表記が少し特殊であるように感じます。このようなかたちになった理由もぜひ教えてください。

咲吾:『千夜一夜物語』はアラビア語だとアルフ・ライラ・ワ・ライラという言葉になるんですが、その内容はシェヘラザードが王に殺されることなくまた次の一夜を迎えて、そのたびに王に物語を毎晩聞かせていたという話なんですよ。

──シェヘラザードに出会うまでの王は、女性不信から夜ごと新しい妃を迎えては朝になると殺してしまう、という蛮行を繰り返していたという背景がある物語ですものね。彼女は次々と面白い話を寝物語として語っていくことにより、「次の話も聞きたい」と王に思わせて命をつないだわけで、それはかなり緊張感のある状況だったのかもしれません。

咲吾:そういう物語をモチーフにしつつ、BabyKingdomは今年で9周年なので次が10周年ということから、999日目があって1000日目があってという『千夜一夜物語』のように、僕らも1日1日をつなげながら生きてきたというところをつなげたかったんです。つまり、ALPHAという言葉には次の夜を迎えるという意味でのプラスアルファというニュアンスを加えているんですね。これは僕らがバンド活動をこれからも続けていけるように、終わりを決めずに物語を続けていこうという意味での「ALPHA来夜」なんです。

──そういうことでしたか。当然テーマがテーマだけに、この「ALPHA来夜」はサウンド面でもアラビアンな要素がふんだんに盛り込まれている印象です。作曲されていく際には、どのようなところから手を着けていくことになられたのでしょう。

咲吾: 志記とはアラビア音階を使った曲にしていこう、という話は当初からしてましたね。同時に「ダンスチューンにしたいよね」というアイディアも出ていたので、志記が3曲くらい作ったデモのうち、第一候補からぶれることなく「ALPHA来夜」がそのままシングル曲になりました。ダンス要素を入れることにしたのには理由があって、アラビア音階を使ったロックとかヴィジュアル系な曲にしてしまうと、以前作った古代エジプトをコンセプトにした「アンクドファラオ」(2018年に発表されたシングル曲)と少しかぶってしまうかな、と考えたからでした。

──エジプトは地理の面でアフリカに類別されるものの、地政学や文化の面ではアラビア世界の影響も色濃い地域ですので、確かにその懸念が出てきてもおかしくありませんね。

咲吾:まさにエジプトの音階はアラビアの音階の一種で発祥は一緒なんです。でも、そこをしっかりと差別化したかったので「ALPHA来夜」は楽しいダンスチューンにしました。あとは、ちょっと後付けでミュージカルっぽい空気感も入れてます。

──なおかつ、「ALPHA来夜」には多彩なリズムパターンが1曲の中に組み込まれているところも特徴的です。

咲吾:Bメロでシャッフルが入ってきますけど、大きく分けると2パターンですかね。

──意外です。聴いているともっと何パターンも入っているように感じます。Aメロもかなり面白い展開になっていますよね。

咲吾: Aメロはドラムのビートが確かに独特な感じになってます。こういう動きのある曲展開にしてあるのは、それこそ『千夜一夜物語』のページをめくっていくような雰囲気を出したかったからなんですよ。曲を聴いた時、本当に本を1冊読んだみたいな感覚をみんなに感じてもらいたいなと思いながら作ってました。

──志記さんが「ALPHA来夜」を仕上げていくうえで、特にこだわられたのはどのようなことでしたか。

志記: 咲吾もさっき言っていたとおり、やっぱり「アンクドファラオ」との差別化は重視しましたね。アラビアとエジプトって昔からシルクロード文化でつながってますから、音楽的な部分でもヨーロッパ圏からエジプトやアラビアを抜けてインドを経由しつつ中国に入っていく、またその逆もしかりという流れがあったわけですよ。そうすると、楽器もだいぶかぶってくるんですね。おそらく、シタールとか二胡なんかはその代表格にあたるものなんじゃないかと思います。

──シルクロード文化とは実に奥深いものですね。

志記: 実は、今回アラビアンな世界を描いていくのにあたって、モチーフを『アラジン』ではなく『千夜一夜物語』にしたのもそこにひとつの理由があったんです。いわゆる中央アジアも中東地域との関係が深いですけど、歴史的には過去に中国の支配下にあったこともありましたからね。だから、そのへんを考慮しなければシタールを使ってた可能性もあるんですが、今回「ALPHA来夜」の冒頭で使ってるのはサントゥールという弦楽器と金属楽器の間にあるような、指で弾くピアノの元祖的な打弦楽器になります。そのサントゥールを使って楽曲を作り始めたことが、今回こだわったポイントのひとつですね。

──サントゥールの音についてはサンプリング音源を使われたのでしょうか。

志記: BabyKingdomではこれまでいろんな国の要素を入れた曲を作ってきたおかけで、僕のパソコンの中には大量な民族楽器の音源が入ってますから(笑)。今回もその中から必要な音や自分のイメージに合う音を有効活用させてもらいました。ただ、上手く使いこなすのはけっこう難しかったです。

──といいますと?

志記:ピアノでドレミファソラシドのドを鳴らしたら、出るのはドの音だけじゃないですか。サントゥールの場合、ド以外にも倍音で違う音たちも一緒に出て来よるんです(笑)

──写真でみるに、サントゥールは4本の弦が1セットになった18コース72弦の構成なのですね。これは倍音祭りになって当然かと。

志記:そういう民族楽器を西洋音楽と融合させるのが大変で、もう試しまくるしかなかったです。理論的に解析することも出来るは出来るんですけど、最終的には自分の耳と感覚頼りでした。どこが一番心地いい音なのか、ということを決め手にしていったんです。

──BabyKingdomは上っ面で“ソレっぽい”ものを作るのではなく、そのつど表現したい世界の歴史や文化の背景も込みで自分たちの音楽にさまざまな要素を取り入れていく、というその真摯な姿勢が本当に素晴らしいです。

志記: まぁ、バンドマン版『世界ふしぎ発見!』を毎回やってる感じですね(笑)

──それから、リズムについては先ほど大きく分ける2パターンとのお話が咲吾さんからあったのですけれど、この「ALPHA来夜」にはドラムの音のみならずパーカッション要素も入っていますよね。それらも含めて、虎丸さんはどのようにこの曲と向きあいましたか?

虎丸: パーカッションは2番に特に入ってる感じですね。僕の苦手なやつです(苦笑)。

──仕上がったこの音からは全くそのようなことは感じませんよ。

虎丸: 今回の場合、いいお手本があったのは大きかったような気がします。僕が1番好きなRAINBOWっていうバンドの曲に「Gate of Babylon」というのがあって、これがアラブ系の雰囲気を持った曲なんです。まだコージー・パウエルがドラムを叩いてた頃の曲なんですけど、今回はタイム感とかの面でそれをめちゃくちゃ参考にしました。

──RAINBOWとは渋いですね。そういえば、虎丸さんはお母様の影響でいにしえのメタルやハードロックを胎教の時代からよく聴いていたとおっしゃっていましたっけ。

虎丸:家にもともと「Gate of Babylon」の入ってる『Long Live Rock ‘n’ Roll』っていうCDがあったんですよ。メタルバンドとかハードロックバンドって、これ以外にもけっこう中東系の音楽を取り入れてるケースがあったりするんですよね。その中でも、やっぱり「Gate of Babylon」は1番カッコいいなと思います。

──ベーシストであるもにょさんからすると、今回「ALPHA来夜」をレコーディングされていく際に大事にされたのはどのようなことでしたか。

もにょ: 今回もいつものように志記さんから完璧に作られた曲がわたしの元に届いたんですが、そこで志記さんに伝えた感想は「いや、いい曲だと思うんだけど、この曲難しくない?」ということでした(苦笑)。とにかくアラビアンな楽器の音も入ってますし、ドラム以外にパーカッションもいっぱい入っているので、作られている譜面に対してはもう何も変えようがなかったんですよね。ちょっとでも自分流に変えようとすると、パーカッションなり倍音成分がどれもベースと重なって来てしまう状況だったんですよ。そのため、わたしは完璧なオンタイムで完璧にベースのビートを刻んでいくことに徹してます。もちろん、ダンスチューンだからちょっとリズムを跳ねさせないといけないところもありつつだったので、細かいところは志記さんと2人で話しながら録っていきましたね。

──きっちりとしながらも躍動感は醸し出していく、という絶妙なバランス感も大切だったということなのですね。

もにょ: 難しいのは難しかったですけど、なんだか新しいゲームをクリアしていくような楽しさもあったレコーディングでした。「お兄ちゃん、また難しいの用意しといたよ!」みたいな感じで(笑)。

──志記さんからしても、もにょさんに対して難しい課題を出しているなという感覚はあったのですか?

志記:いや、 お兄ちゃんに関してはもはやその感覚は捨ててます。最終的にちゃんと弾いてくれるやろという信頼もしてますし、さっきの「リズムパターンがもっといっぱいあるように聴こえる」っていう話も、ほぼほぼベースの音がそういう効果を生み出してくれてるところがあるんじゃないかと思うんです。もちろん、曲を作っていくうえで最も引き立たせたいのは歌とメロディですから、僕のギターなんてある意味“おまけ”みたいな面があるんですよ。僕がこういうことを言うと、周りからはよく怒られるんですけど(笑)。

──志記さんはギターヒーローであって、とても“おまけ”とは思えませんけれど。

志記:僕もギターを弾くのは好きですけど、音楽を作っていく立場で考えると、やっぱり基本的にバンドは何よりもリズムとベースが重要だと考えてるんです。つまり、お兄ちゃんがしっかりした仕事をしてくれているからこそ、音源の中での僕はちょろちょろしながら面白さを醸し出す人でいられるというか。それだけに、ベースについては難易度を敢えて気にせず特にこだわりました。

──なるほど、そういうことでしたか。

志記: ドラムに関しても裏拍のダンスビートと、ちょっと中東チックなところ、ポンポコポコポコっていう感じのいわゆるダルブッカの部分は凄くこだわってます。あれは多分「あぁ、これインド映画でよく聴くわ」みたいな雰囲気になっていると思います。

──エキゾチックなテイストが色濃く出ている部分ですね。

志記:あれが入ってくることでユーロビートのダンスチューンではなく、魔人が出て来そうな妖しい空気感が生まれるわけです。以前、僕はエリック・クラプトンのライヴを観に行った時ドラムに対してのパーカッションの当て方で凄く勉強になったところがありまして、それ以来パーカッションというものを重視するようになったんですよ。

──令和の時代にV系シーンの第一線で活躍しているBabyKingdomから、RAINBOWやエリック・クラプトンの名前が出てくるというのは非常に興味深いです。

志記: そこは先人たちの成し遂げてきた偉業があってこその今、ですからね。その歴史を知らないことにはロックを語れねぇ、ブルースも語れねえと僕は思ってます。

──さすがです。かくして、綿密に音が作り込まれていった中「ALPHA来夜」の歌詞について、咲吾さんはこのメロディーに対しどのように言葉を載せていかれましたか。

咲吾: 僕は基本的にメロディーと歌詞を同時進行で作っていくタイプなんですけど、最初はサビの《Thousand and one nights!(one nights!)》っていう部分から作っていきましたね。ただやっぱり、アラビア音階に言葉とメロディーをのせていく難しさはどうしてもありました。普通のドレミファソラシドって半音の移動が2個ずつ2個ずつですけど、アラビア音階は半音の移動が一気に4個あるんですよ。サビの裏声で高くなってるところも、あそこまで上げなくても曲としては成り立つんですけど、そうしないと妖艶さとか怪しさを持ったアラビア感が出ないんです。そこを重視しつつも日本語を綺麗にはめ込んでいくという部分で、今回は過去イチくらいに大変でした(笑)。

──アラビアンな音楽的メソッドも守りながら、日本語を軸に詞を綴っていくのがどれだけ難しいかは、実践された咲吾さんしかわからないのでしょうね。

咲吾: 「ALPHA来夜」の詞では、一貫して《終わりは始まりの始まり》ということをブレずに伝えたかったんです。来年で僕らは10周年ですけど、だからといってヘンに無理をしてド派手なことをやって、そこから失速してしまうようなバンドにはなりたくないですからね。地道に一段一段ずつ踏み締めていく11年目を見据えた生き方をしていきたいね、ということをメンバーみんなで話したあとに書いた歌詞なので、『千夜一夜物語』のようにページをめくったらまた次のページが始まるよ、という表現をしていくことは僕ら自身とも重なるところでした。

──個人的には、この歌詞を通して初めて知った単語がありました。《花布のオヤスミを》の“花布”とは本の中身の背の上下両端に貼り付けた布、のことだったのですね。

咲吾:あ、そこ気付いていただけたんですね! 僕も知らなかったんですよ(笑)。

──その単語がひとつ入っていることで、イマジネーションが一気に拡がります。

咲吾:僕もこの言葉を見つけた時、とても良い言葉と出会えたなと思いましたね。綺麗な言葉ですし、日本語の良さを再認識することが出来ました。

──かと思うと、おなじみの《アブラカダブラ》が織り込まれているところは非常にキャッチーです。

咲吾:これって全世界で通じる魔法の言葉らしいんですよ。ハンドサインとかだと国によって意味が違ったりしますけど、みんながわかる言葉っていいなと思って使ってます。

──物語性とメッセージを両立させたこの詞を、歌っていく時に咲吾さんが大切にされたのはどのようなことでしたか。

咲吾:曲調がダンスっぽいという部分では、マイクを持ってどっしりと歌うイメージではなく、ミュージカルみたいに足元のマイクで歌を拾っていくような軽やかさを出していきたかったです。それと、ストーリーテラー的な役割を果たしていくという面では歌の発声方法に加えて、声優さんみたいな深みを意識したところもありました。具体的には2番のAメロで1オクターブ下で出してるコーラスがそうなんですけど、これは前作『SEIMEI』で真言を唱える部分をずっとツアーでやっているうちに、いわゆる“喉ベース”という発声方法をマスターすることが出来たので、それをあらためて使ったんです。

──喉ベースとは、よくヒューマンビートボックスで使われる発声方法ですよね?

咲吾:わかりやすいところでいうと、HIKAKINさんがよく歪んだ声でブンブン言ってるアレです。『SEIMEI』のレコーディング時点ではまだ上手く出せへんかった発声やったんで、エフェクトをかけてたんですよ。それを今回ちゃんと出来て嬉しかったです。

──明らかなる成長がうかがえて素晴らしいですね。ということで、ここからはもう1曲の「ヒラケゴマ」についてもお話をうかがって参りましょう。こちらはこちらでまた踊れる曲になっておりますね。

咲吾: これは当初、志記から「IQ3ぐらいの歌詞を書いてくれ」って言われて作った曲なんですよ。深く考えなくて良くて、飛んでくる言葉が面白い、みたいな曲というか。これは要するに パーティーソングですね。歌ってるのはドアが押し戸なのか、引き戸なのか、スライドドアなのかよくわかんないね!っていう感じの内容です(笑)。

──しかしながら、それって人生にあてはめてみると実は深い話のようにも思えますよ。

咲吾:そうなんですかね。僕は今回、それを恋の告白というかたちで表現してみましたけど。とある女の子があと1歩を踏み出せない、みたいな。

──遊び心がちりばめられているついでに、この詞には《魔人マルトラ》というフレーズが出てくるところもポイントですね。

虎丸:どうも、魔人マルトラです(笑)。

咲吾:魔人マルトラに《セクシーダイナマイト光線》を出させたかったんですよ(笑)。

──ダンスビートと三拍子が入り混じったこの曲調もあいまって、これはライブでもさぞかし盛り上がることでしょうね。

志記: そもそも、この曲は仙台で対バンライブをした時に虎丸が僕の肩をつついてきて、突然「志記さん、志記さん。俺、電波ソングやりたいねん」って言われたのが始まりだったんですよ。

──電波ソング!久しぶりに聞いたキーワードです(笑)。

咲吾:昔そういうの、アニメのオープニングとかで流行りましたもんね。

虎丸:「ALPHA来夜」もそうなんですけど、BabyKingdomの曲って頭使わないとやれない曲ばっかりなんですよ。そうじゃない曲もたまには欲しいなと思って、僕は電波ソングっていう言葉を使って志記さんに要望を伝えたんです。

もにょ:『FUNNY∞CIRCUS』(2024年発表の最新フルアルバム)を出して以降、BabyKingdomはバンドの方向性として曲をどんどん深掘りしていく方向に成長曲線が伸びてきてたと思うんですよ。でも、もともとのパブリックイメージとしてはポップで聴きやすいというのがBabyKingdomの特徴でもあったので、このところ志記から相談を受けたりすると「うちは難しいものを簡単に面白く聴かせていくバンドにしていけばいいんじゃない?」というような話をよくしていたんですね。ただ、ライブでお客さんたちがより楽しめるものもやっぱり大事だなと考えていたところもあったので、今回の虎丸から提案された電波ソングというのは「あぁ、それもいいやん!」って思いました。

──敢えての“IQ3”なところが素敵です。

もにょ:「ALPHA来夜」とは対極ですね、「ヒラケゴマ」は。その分、こっちはベーシストしての自由度も高かったですね。レコーディングでも志記さんは「何やってくれても大丈夫やで」という感じで優しかったです(笑)。

──さてさて。両A面となっている今回のシングルは「ALPHA来夜」も「ヒラケゴマ」もそれぞれに最高の仕上がりなのですけれど。ぶっちゃけますと、個人的にはカップリングとなる「クリティカルナンバー」が最もツボにぶっ刺さりました。これは完全なる褒め言葉として受け取っていただきたいのですが「あれ?SIAM SHADEの新曲かな?」と感じてしまった次第です。

志記: ですよね、そう聴こえますよね(笑)

咲吾:正解です!

志記: SIAM SHADEが好きで、SIAM SHADEに対するリスペクトを持ちながら作った曲なのは確かですし、これは最近ライヴで僕がテクいことをやる機会が増えたこととも関係してますね。けっこうみんな「タッピングが好きなんやな」ということに気付いたんで、いっそド派手なタッピング曲を作ってみようと思ったんです。ハードロックテイストで、男性の方が聴いてもテンションがぶち上がるような曲というのを目指しました。

──女性のわたしもテンションぶち上がりですよ。大好物です(笑)。

志記:ありがとうございます(笑)。

──胎教時代からHR/HM漬けですくすくと育った虎丸さんとしても、この曲に対しては相当に血が騒いだのではありませんか。

虎丸:いやでもこれ、速いんですよ。これだけ速いのをどうやって叩こう?っていう気持ちがまずは先に立っちゃいましたけど、なんとか頑張って叩いてます(笑)。

もにょ: 僕もそこは虎丸と同じ意見で、ふたりで「速いなぁ、これ」っていう話はよくしてました。そうしたら、志記さんから「お前、ロックやめちまえ」って言われちゃいました(笑)。フレーズ的に難しいわけではないんですが、自分としては近年で一番苦労したレコーディングでしたね。でも、僕の大学時代の友達がSIAM SHADEさんのことを凄い好きで、結構一緒にサークルのバンドで何回もコピーさせてもらってましたし、僕もSIAM SHADEさんは好きなんですよ。BabyKingdomにもこういう曲があったらいいなとも思っていたので、今回こうしてかたちにすることが出来て良かったです。志記さんがギターヒーロー側にどんどん行ってくれてるのも、とてもいいことだなと思ってます。

志記:あと、裏話としましては「1/3の純情な感情」が入ってるSIAM SHADEの『Zero』というアルバムに「Bloody Train」という曲があるんですね。「クリティカルナンバー」の2Aはあの曲のソロの入りにだいぶ寄せてます。というか、自分としては長いソロを作ったつもりが、咲吾に渡したらそこに歌が乗っかって返ってきました(笑)。

咲吾:僕は志記から土台のトラックをもらって、自分が入れたいところに歌を入れてただけなんですけど、どうやらそれがギターソロとかぶってたみたいです(笑)。

──「クリティカルナンバー」の歌詞にはどのような想いを込められたのですか?

咲吾: この曲ってBabyKingdomの中でもかなり短くて、デモの段階で2分59秒、マスタリングして3分ジャストになってるんですよ。で、僕らはいつもワンマンでライブをする時に2時間でだいたい20数曲をやってるんですね。場合によっては予定してたセットリストが終わった時点で時計を見て、「あ、まだ10分ある。2曲追加出しちゃおう」「5分あるならもう1曲やれる」ってなることもあるんですけど、この3分っていうのはそういう意味で使いやすいなと思いまして。だったらもうこれはライブの最後でガンガン盛り上がって、みんなも拳を振り上げられるような熱さのある曲、そして歌詞にしたいなと思ってこういうかたちになりました。

──「クリティカルナンバー」というタイトルにはどのような意味があるのでしょう。

咲吾: あんまり聞き慣れない言葉かもしれないんですけど、これはシステム工学で使う臨界点という意味の言葉らしいんですよ。たとえば、9999から次の10000に変わる瞬間とかに、システム的に何か大きく変わってしまう事態を指すみたいです。具体的には、2000年問題とかああいう状況になるんですかね。だから、そこが9周年を迎えた今のBabyKingdomにぴったりやな!っていう気持ちがあったんです。

──その点では「ALPHA来夜」とも相関関係があるのですね。

咲吾:そうなんですよ。それと、この詞には僕の趣味のボクシングをからめたところもあったりします。コロナ禍から始めるようになったんですよ。

──持久力と瞬発力の両方が身につくうえ、精神も鍛えられるストイックなスポーツではあると思いますが、フロントマン的には顔が腫れたりすると大変なのでは?

咲吾: ヘッドギアしますし、アマチュアボクシングジムなので今のところ大丈夫です。傷が出来たとしても、ファンデ塗ったらわかんないんで(笑)。でも、あばらは両方とも折りましたね(苦笑)

──えぇーっ!

咲吾:だけど、 折られたことによって僕は歌が上手くなったんですよ。あばらを折ると胸式呼吸は痛くなっちゃうので、強制的に腹式呼吸するしかないんです。歌は腹式呼吸が大事なので、自分にとっては凄く良い経験になりました。

志記: この言い訳を僕らは10回ぐらい聞いてますよ(苦笑)。そして、鼻頭に傷を作って来たときは「虫に刺されたのかなぁ」とか言ってました。まぁ、それでもライブは休まずにやってるんでね。今のところは見守ってる感じです。

──ボクシングで鍛えた咲吾さんの身体能力と呼吸法が、ここからの<winter oneman tour 『Arabian Dream』>でも存分に反映されていくことを期待しております。

咲吾:ボクシングでは最後の一撃がとても大事なので、ライブも「そろそろ限界か?」って思ったところからの最後の一撃まで、渾身の力を振り絞りながらやっていきたいです。

志記:まさにボクシングは1ラウンド3分やしな。そこにきっちり合わせてこの曲を作れたことにも意義がありました。

咲吾: 今度のツアーはBabyKingdomにとって2025年最後のツアーでもあるので、いつもごとくではありますが、とにかく悔いのないように、1本1本、1曲1曲、1ワード1ワードを大切にしながらやっていこうと思います。

虎丸:あとはまぁ、体力をどこまで持たせられるかですね。

もにょ:そこはなんとかしてください(笑)。

取材・文◎杉江由紀

「ALPHA来夜/ヒラケゴマ」
2025年10月8日リリース
「ALPHA来夜/ヒラケゴマ」配信:https://orcd.co/alphalaiya_os

【初回限定盤 A type】 CD+DVD

品番:AMFD-1029 価格:¥1,980(税込)
[CD]
1.ALPHA来夜
2.ヒラケゴマ
[DVD]
「ALPHA来夜」 MV&メイキング

【通常盤 B type】 CD

品番:AMFD-1030 価格:¥1,650(税込)
[CD]
1.ALPHA来夜
2.ヒラケゴマ
3.クリティカルナンバー
4.ALPHA来夜(inst)
5.ヒラケゴマ(inst)
6.クリティカルナンバー(inst)

A/Bタイプ共通 封入特典: ※初回プレスのみトレカ1枚ランダム封入(全8種の内)

「ALPHA来夜/ヒラケゴマ」 発売記念インストアイベント
2025年10月8日(水)
HMV&BOOKS SHIBUYA 5F
BabyKingdomプロデュース 【発売日記念特番インスト!】

2025年10月12日(日)
littleHEARTS.大阪店
もにょプロデュース 【ハロウィン直前ヴァンパイアインスト】

2025年10月17日(金)
HMV大宮アルシェ
BabyKingdomプロデュース【BEAT SHUFFLE出演前サイン会】

2025年10月19日(日)
タワーレコード池袋店
虎丸プロデュース 【虎丸バースデー前夜祭!!!】

2025年11月2日(日)
音楽処
BabyKingdomプロデュース 【べびきん満喫!北海道満喫!】

2025年11月8日(土)
Joshin日本橋店 7階イベントホール
BabyKingdomプロデュース 【BabyKingdomフリーライブ】

2025年11月13日(木)
ミュージックプラザ・インドウ
BabyKingdomプロデュース 【ツアー中盤戦!作戦会議】

2025年11月22日(土)
名古屋fivestars
志記プロデュース 【勝負しようぜ!ゲーム内容未定】

2025年12月6日(土)
HMV仙台EBeanS
虎丸プロデュース 【もしも日帰りで仙台行くなら…?冬のデートコーデ】

2025年12月14日(日)
タワーレコード新宿店9F
BabyKingdomプロデュース【ツアーファイナル前夜一夜の決起会】

2025年12月24日(水)
littleHEARTS.東京店
BabyKingdomプロデュース 【べびきんクリスマスイブ会】

<winter oneman tour 『Arabian Dream』>
10月11日(土) KYOTO MUSE
10月26日(日) 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
11月1日(土) 札幌Crazy Monkey
11月2日(日) 札幌Crazy Monkey
11月9日(日) 神戸 太陽と虎
11月12日(水) INSA FUKUOKA
11月15日(土) 岡山image
11月16日(日)加古川 gratz
11月23日(日) 名古屋ell.FITS ALL
11月24日(月祝) 静岡 Sunash
11月29日(土) OSAKA MUSE
12月07日(日) 仙台 ROCKATERIA
12月12日(金) 西川口 Hearts
12月13日(土) 柏 PALOOZA
Tour Final
12月18日(木)Veats Shibuya

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